エナクトメントって何?
エナクトメントについて知りたい。
エナクトメントを日常の臨床に活かしていきたい。

このような思いを持たれている方にご紹介する本はコチラ!

妙木浩之(編)『精神療法 Vol.49 No.3』金剛出版

今回のテーマは「エナクトメント」です。
中村伸一先生も本書の中で述べられていますが、
家族療法での「エナクトメント」ということではなく、
精神分析での「エナクトメント」になります。
私もかつて同じ言葉なのに意味が違うので混乱した記憶があります。

エナクトメントとは、
「本来の治療から外れた行動化であったり
 治療者の逆転移から治療者としてふさわしくない行動を間違ってしてしまったり、
 という意味合いであって、
 できれば取り除くべきノイズという位置づけである。」(p.328)
と小川豊昭先生は書かれています。
だからこそ、よりよいセラピストになるためには、
エナクトメントに気づき、それにどのように向き合っていくのかが重要だと思いました。

衛藤暢明先生は「治療者が理論や働き方における自己満足を回避するための最も重要な問い」(p.335)として、
有名なパトリック・ケースメントの言葉を紹介してくださっています。
「私だちが自分自身のある型へと他の人たちを変えてしまおうとするために、
 私たちが見てきたとおりに彼らが自分自身を見てしまうようになる、
 その危険に対して私たちは十分警戒していますか?」(p.335)
心に非常に響きますね。

エナクトメントを考えていくにあたり、
長川歩美先生がセラピストの脆弱性について論じています。
この内容はセラピストだけでなく、
セラピストを目指す人たちにもぜひオススメです。
深い省察につながると思います。

上田勝久先生が書かれた事例もとても興味深いですし、
岩壁茂先生の「心理療法における失敗の意味」も臨床家としてのあり方を考えさせられます。

最後に巻頭言に岡野憲一郎先生が治療者の「資質」について書かれています。
「「謙虚」な人だ。(中略)
 自分の価値観を持ちつつもそれを絶対視せず、
 他者のそれを認めるような治療者である。」(p.321)
セラピストとして「謙虚さ」は何年経っても本当に忘れてはならないと改めて思いました。