心理療法について知りたい。
心理療法がうまくなりたい。
心理療法についてもっともっと深く考えたい。

このような思いを持たれている方にご紹介する本はコチラ!

内海新祐・青木省三(編)『こころの科学 230号』日本評論社

今回のテーマは「心理療法のエッセンス こころに動きをもたらすもの」です。
臨床家の方や心理職を目指されている方にとっては、
テーマを見ただけで、ワクワクしてくるのではないでしょうか。

最初の内海新祐先生の論文から引き込まれます。
「心理療法のエッセンスについて、
 本気で仕事をしている臨床家に本気で尋ね、
 本気で答えてもらったら、
 いったいどんな答えが返ってくるのだろう?」(p.16)
そして、内海先生は児童養護施設の臨床経験を通して、
「治療的なこと、治療的なかかわりは生活の端々に遍在している」(p.19)
と述べられており、生活臨床の重要性を感じます。

青木省三先生は、
「心理療法は、平凡なことをコツコツと粘り強く。
 人は華々しく癒えていくのではなく、
 目立たず地味に癒えていくのだと思う。」(p.22)
と述べられており、これまた心にしみます。
「「聞いて、受け止めて、共感し労い、一緒に考える」というのを繰り返すのである。
 これが簡単なようで実に難しい。」(p.24)
心理職をマジシャンのような華々しい職業だと思って目指している方は、
今一度立ち止まって本当に自分にとっての適職なのかどうか考えてみるのもいいかもしれません。

原田誠一先生は、
「臨床に携わる精神科医、心理療法家は、ここに出てくる
 ①認知再構成、②暴露、③行動活性化、④マインドフルネスの概要を理解して、
 治療の場で活用できるようにしておくことが望ましい。」(p.31)
と述べられており、これは現在の公認心理師養成教育で求められている重要な4つになると思いました。

宮地尚子先生は、
「身体への働きかけを通して、
 クライエントが自分の身体感覚に目を向けること、
 過覚醒や凍りつき状態ではないニュートラルな感覚を実感できるようになることの意義は大きい。
 治療者のほうも得られる情報が広がり、
 また安全に治療に当たれるというメリットもある。」(p.41)
と述べられており、身体への働きかけ方に最近、私はとても興味がわいています。

小林桜児先生は、
「アタッチメントや愛着志向療法といった概念は、
 さまざまな治療手段を横の糸で結びつけ、
 治療の道しるべとなるものである。」(p.72)
と述べられており、これまたとても興味深い内容です。
アタッチメントは本当に重要な概念だと思います。

山崎孝明先生は、
「患者のn=1を大事にすること、
 「関心をもち」「専門知を偏重せず」「患者から学ぶ」ことこそが、
 心理療法という、
 人と人との一筋縄ではいかない実践をよきものとするために必要なこと」(p.86)
と述べられており、これは臨床経験をどんなに多く積もうとも、
いつまでも心に留めておく必要があると個人的には思います。

と、このように本書は心理臨床家としてやっていくためには、
必要不可欠なことがたくさん書かれております。
事例も多く、とてもわかりやすいのではないでしょうか?
心理臨床家を目指す学生さんや院生さんはぜひ一読することをオススメします。
一読どころかボロボロになるまで読み込むのもありだと思います。